|
村崎 ようやく春らしくポカポカした陽気になってきたせいか、通り魔事件が連発して例年通りのさわやかな春を感じさせるね(編集部注:誤植ではありません、こういう人なのです)。なんつってもナンバーワンは、土浦の茨城沖駅で通行人を8人刺したアキバ系電波クンの事件だよな(★1)。 唐沢 何がスゴイって、妹を殺すつもりが家にいなかったので赤の他人を殺したとか言っていたり、自分のケータイに「おれが神」とか書いて自分にメールしてたり、乳揺れゲームが好きだったり、後から後から、いいネタが出てくることね。マスコミにとっちゃまさにネ申、ってとこじゃないの。 村崎 おまけに「週刊新潮」の記事によると、父親は外務省勤務の公務員だっていうんだよ。ホントかね? あまりにも話が揃いすぎていて、どこまでマジな話なのか疑わしくなるよな。顔を見たらごく普通の若者なんだけど。 唐沢 犯行時に丸刈りにニットキャップかぶって、メガネとスーツ姿だったらしいんだけど、四日前にも一人殺して指名手配になっていたから、扮装用のつもりだったらしいんだな。そこがキチガイのキチガイたる所以てえか、そんな扮装、かえって怪しまれるだけだと思うんだけど(笑)。 村崎 コンビニのバイトを掛け持ちして、けっこう金を貯めていたらしいから、どうせメガネとか買うんだったら、少しはブランドにも凝ってほしかったよな。殺人鬼にかけて欲しいメガネでオレのイチオシはなんといっても「Less than Human」。ここは凄いよ〜。「人間以下」を名乗るだけあって、「ヘンリー・ルーカス」だの「ペーター・キュルテン」だの、名だたる歴代連続殺人鬼の名前をつけたフレームを堂々と売ったりしてんのよ(笑)。それもマンソンやゲイシーやダーマーみたいな超有名どこばかりじゃなく、“ボストン絞殺魔”の「アルバート・デサルボ」とか、“パリの死神医師”の「マルセル・プティオ」とか、けっこうマニアックな殺人鬼までフォローしていてさ、他にも黒縁のシックな「乱歩モデル」なんてのもあるから、唐沢さんにもぜひオススメしたいね。 唐沢 いらんわ(笑)。ていうか、“アキバ系”“ゲーマー”“妹萌え”“電波”で、おまけに“官僚の息子”ってのはもう完全にリーチ、お腹一杯でもうこれ以上の要素はいらないくらいだよ。 村崎 学生時代は坂本龍馬のファンだったらしくて、「修学旅行で龍馬が死んだ場所に行けてうれしい」とか言ってたらしいね。 唐沢 発言の脈略がさっぱりわからん(笑)。取調べも苦労してるんじゃないの。またぞろワイドショーなんかで「“ゲーム脳”の弊害」みたいな大合唱が起きるかと思ってたんだけど、さすがにマスコミもこのフレーズに飽きてきたのか、あんまし騒いでないな。 村崎 「フィギュア萌え萌え族」の命名者の大谷昭宏なら「誰でもいいから殺したい族」とか付けるかもね(笑)。こいつ自身はアーケード系に強かったらしいんだけど、負けたらキレてマシンを蹴っ飛ばしたかと思えば、初心者の小さな子供に丁寧にテクニックを教えてあげるような優しい一面もあったらしい。 唐沢 そこなんだよね。人格が分裂したまんまで統一されていないから、“ゲーム脳”みたいな一つの症例でまとめあげることができないんだよ、今回の場合。 村崎 弟関係は妹2人と年の離れた弟1人がいて、弟とは仲が良くてよく可愛がっていたらしいんだけど、上の妹とは不仲で「生活態度がよくない」ってんで殺してやろうと思ったら、本人がいつまでも家に帰ってこなかったんだと。 唐沢 朝帰りか。確かに「生活態度がよくない」わ、そりゃ(笑)。 村崎 で、ここから先の不可解な展開がマスコミを悩ませているところなんだけど、妹がダメなら代わりに小学生を無差別に刺そうと自分が卒業した小学校に刃物をもって行ったら、卒業式の真っ最中で、父兄や教師らのギャラリーが多くてこりゃ無理だとすぐに諦めて、帰りの途中で見かけた老人(この人の名前が“三浦芳一(よしかず)”っていう、“三浦和義(かずよし)”と微妙に似ているのも笑っちゃったんだが)を取り合えず刺し殺して、なぜか自転車をその場に置き去りにして、帰宅して着替えてからアキバに逃走したと。 唐沢 いっそシュール演劇みたいで、何やってんだか思考回路がまるで理解できんな(笑)。 村崎 それで秋葉原のビジネスホテルだかネットカフェだかに泊まりこんで潜伏していたんだけど、一向に警察がやってくる気配がないので、110番に電話して「私が犯人です。早く捕まえてごらん」って一分以上電話かけて挑発したんだとさ。 唐沢 “サムの息子”(編集部注:1976〜77年にかけて、ニューヨークで若い女性やカップルを銃殺して回った連続殺人鬼。自分の殺人衝動を止めてくれる旨を懇願した手紙を警察に送りつけていた)みたいだけど、あのデビッド・バーコウィッツが自分の二重人格性に悩んだ末の犯行のような重みがないんだよな、カケラも。事件が大きくなったのは、ひたすら警察の無能によるものでしょ? 村崎 それでも一応、茨城県警も指名手配していて、私服も含めて170人もの警官を動員して常磐線沿線の各駅に配置していて、事件のあった荒川沖駅にも捜査員を8人配置していたんだよ。結果的にあのザマなんだけどな。刺された被害者のなかには、改札口近くで張っていた捜査員も混ざっていたそうだし、そいつと組んでた捜査員は改札の内側にいて、慌てて追いかけようとして見失ったらしいから、えらい情けない話だよな。他の6人は事件があったことさえ分からなかったそうで。 唐沢 逆に言えば、警察が張り込んでいる目の前であれだけの殺戮行為をしておいて、つかまらずに逃走に成功しているんだよね。これはたいしたもんだよ。 村崎 近くの店のオバちゃんの「もう、そこらじゅう血だらけよ〜、バケツで2杯くらい」って証言がナマナマしくて凄かったね。でもさすがに犯人の金川クンは恐くなって、逃げ切ってからすぐに近くの交番に出頭しているんだけど、交番に誰もいなかったから、仕方なく交番の前に止めてあったバイクのタイヤをグサグサ刺していたら、通行人に注意されたんで、交番の電話から110番して自首したんだとさ。誰もちゃんと逮捕しれくれないなんて、さびしいよなあ……(遠い目)。 唐沢 ここまでくると、なんだかおとぎ話みたいだよね(笑)。すべてのネジが狂っていて、現実感がまるでない。この犯人に対する罵倒とか譴責とか、早く死刑にしろ、みたいな声が、他の事件に比べるとネットでも少なめなのも、そのせいかも知れん。 村崎 荒川沖駅に待機していたのも実は本職の刑事は一人もいなくて、地域の警察安全課とかが私服で張っていたらしい。駅にも捜査協力は一切していないで、後になって駅長が構内に警察がいた事実を初めて聞いたってくらい、間が抜けているんだよ。 唐沢 警察側の失態と犯人側の犯罪のスケールの差っていうのがね、ここまで大きくなっちゃうともう処置なしだね。社会のシステムがここまでまともに機能しない例っていうのは、珍しいと思うよ。 村崎 自首していなかったら、こいつ、まだ捕まっていなかったかもしれないんだぜ? もう茨城県警の職員は一人残らず事件当日の給料の返納くらいした方がいいと思うぞ。 唐沢 まあ、こんな、殺す理由もなければ狂う理由もない人間に、危機意識を持って対処できるかっていったら、無理な話だろうしね。実際、前科持ちでもなければ、普段から挙動不審だったりするフシもなかったそうだし、いまどきの若者犯罪とはちょっと違うんだよね。 村崎 高校卒業して一応は就職はしていたし、そこを辞めてもあちこちのコンビニでバイトしてたらしいから、別にニートでも引きこもりでもないんだよね。どこにでもいるゲーム好きの普通の若者な。 唐沢 “誰がどう見てもニート”っていうならまだわかりやすいんだけど、それなりに社会適応能力はあって、ただ家族や友人との心の交流がなかったっていうね。こういうニート未満でも問題抱えている若者って、実はすごく増えていると思うよ。一見まともに見える分、マスコミに問題視されてないってだけで。 村崎 ニートは無気力な分だけ人畜無害でこんな事件起こす気力もないだろ。こいつの場合はバイトできっちり貯金もして、たまにアキバにゲーム買いに行くくらいしか散財していなかったそうだし、でも包丁は犯行の数ヶ月前に買い込んでいてその頃から誰か殺すつもりだったらしいし、ホントに精神状態がヤバイまんまで日常生活を送っていたみたいなんだよな。今回も計画的な犯行ってわけでもなくて、「最初に殺そうと思った妹が帰ってこなかった」ってことをスタートに、わらしべ長者みたいに事件が転がって大きくなっていった「風桶屋現象」って感じだよな。 唐沢 怨恨も何もまったく関係ない感じだもんね。ただ、自分が周囲に対して不快と感じる度合いと、それを罰してやろうという気持ちの度合いの目盛りが、常人に比べて著しく狂っているんだね。 村崎 だから今回はひとえにこいつの“キチガイ力”の凄さにみんなが振り回されたって印象なんだよ。予測不能の行動力っていうか、“キチガイ力”がずば抜けている人間の暴走は、まともな人間が何人掛かろうと止められやしないってこった。今さらナンだけど、警察の無能っぷりばかりを糾弾するのもどうかと思うんだよ。今度のことで「事件は現場で育つんだ!」ってことも良く分かったし。 |