秘密組織はネーミングに気をつけよう

村崎 相変わらず景気悪い上に政治も悪くて、自民党も民主党も醜態さらして、おまけに北の将軍様もドン詰まっていよいよ気が狂ってきたようだけど、肝心の国内の事件関連はあんまりいいニュースが入ってこないんだよ、困ったもんだな〜。

唐沢 オレ、面白かったのは、道頓堀から十八年ぶりにカーネルサンダースの人形が引き上げられて、阪神が優勝できない最大の理由とされる“カーネルサンダースの呪い”が解けたってタイガースファンが大喜びしているってニュースね(★1)。でも、ありゃどう考えても幸運を運んでくる姿じゃなかったな、カーネル。

村崎 あ〜もう、汚ねえ「ゾンビ・サンダース」って感じで、足首や手もモゲてるし、すっごいグロテスクな姿で引き上げられてたね〜。あんな映像を何度もくり返し放映されたんじゃ、阪神ファンは大喜びだろうけど、ケンタッキーフライドチキンはものすごい営業打撃だろうに(笑)。

唐沢 アメリカの野球関係者から譲ってくれってお願いが来ているらしい、「幸運のお守りにしたいから」って。呪いなのかお守りなのか、どっちなんだよ(笑)。とはいえ、まだ左手が見つかっていないんだが、岩田が左肩炎症で2軍落ちになったり、まだ呪いは続いているという噂もある。

村崎 これで今期阪神が優勝できなかったら、呪いの人形確定だな。そしたらどーすんだ? また道頓堀川に投げ込むのか? ソースの二度漬けは禁止なんだから、サンダースの二度投げも止めとけよ(笑)。で、オレのほうは、唯一面白かったのが、愛知県半田市の私立中学の一年男子十一人が「先生を流産させる会」を結成して、妊娠していた女性担当教師の給食にミョウバンを混ぜたり、椅子のねじを緩めたりしていたという事件(★2)。悪質ないたずらをするのに、わざわざ会まで結成するあたりが、チームワークの良い民主主義的というか(笑)、なかなか気合が入っているじゃないの。

唐沢 こういう社会常識から外れた行動に少年たちが結集して、力を合わせて取り組むってのは、何かね、昔のケストナーの「エーミールと探偵たち」とか江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズの再来を見ているようで、何だかニュース聞いてワクワクしちゃったよ(笑)。

村崎 でも、こういうのが大人になって選挙の時に「山田太郎君を男にする会」とか、ダッセエ名前の後援会つくったりするんだぜ(笑)。

唐沢 そうだ、秘密組織をつくるならネーミングは少し、考えてほしいところだったよね。「先生を流産させる会」じゃそのまんま、名前からして会の本来の目的が全校に筒抜けじゃん。まるでユダヤが『世界征服陰謀の会』って結社を作るみたいなもんだ(笑)。

村崎 せめて「先生を流産させる会」の頭文字イニシャルだけにして「SRK」と名乗るとかさ、入会すると何だかカッコイイ気分になれそうな団体名にしてほしいよな。これだと昔のノイズバンドみたいでなんだかいいぞ〜。

唐沢 『シャボン玉の会』ってのはどうかね。あの歌(「シャボン玉」)は農村での間引きを歌った歌だと言われているからな。いや、実際、世間様に顔向けできない裏の組織をつくるときのネーミングのセンスって必要だよ。最近、摘発される自殺幇助サイトの名前を見ていても「闇のなんたら」とか「黒いなんたら」とか、いかにも悪いことしてそうなネーミングばっかりだもんね。アタマ悪いというか何というか。そういえば、海外のサイトで昔、“アンチキリストサイトの作り方”ってのがあって、まず第一条が“トップに「アイラブマリリン・マンソン」とか書かないこと。バカにされる”というのだった(笑)。東も西も単純バカのやることは変わらんね。

村崎 そもそも会を発足させた原因が、「先生の席替えの仕方に腹が立ったから」ってんだから単純というか呆れるよ。教師の側からすれば、仲良し同士を隣り合わせると、私語ばかりでうるさくて授業の妨げになるっていう判断なんだろ。そういうのは教育者としては正しい判断だと思うよ。この程度のことで恨まれて流産させられたんじゃ先生もたまったもんじゃないな。

唐沢 学校って場所は、生徒が社会に出たときのシミュレーションの役割も果たしているんだ。「給食は残さない」「掃除当番はちゃんとやる」「授業中は私語を慎む」なんてのは、世間を渡っていくときの常識を、幼い時分から体に叩き込ませるという狙いもある。それを不愉快だと感じるのは勝手だけど、社会に出るってのはそれ以上の不愉快に直面することの連続なんだからね。大人になるための予行練習だと思えばいいだけの話なの。実際、体育会系の人間は社会に出ると重宝されるっていうけど、あれは学生時代に不合理、不条理な命令でも頑張って耐えて臨んできたっていう経験をしているからなんだよな。

村崎 是非はともかく、現実には「さまざまな理不尽に耐えられる人間になること」が社会人のキホンだもんなあ。とにかく、中学生の分際で悪の秘密結社を作ろうとした気概は買うけど、それ以外の点はやっぱり未熟な中坊意識炸裂って感じで、アタマ悪すぎ。次はもう少しガンバレよ。

唐沢 首尾よく先生が流産したところで何の得があるのかね。卒業後も毎年、流産した日に集まって、水子供養で盛り上がるっていう楽しみはあるかもしれんが(笑)。

村崎 ヘタすりゃ、水子の呪いで、会のメンバーが毎年一人ずつ謎の死を遂げていくっていう、ホラー映画さながらの恐怖を体験できるかもしれないじゃん! 「毎年誰かが死ぬ流産会の恐怖」だとか、また新たな都市伝説の誕生だよ(笑)。

唐沢 おまけに手口が給食にミョウバン混ぜるとか、椅子のねじを緩めるとか、ほとんどが江戸川乱歩言うところの“プロバビリティの犯罪”(相手に直接的な暴力を加えるのではなく、間接的な仕掛けで少しづつ危害を加えて、結果的に死に至らしめるという方法)に過ぎないんだな。どうにもショボいところが情けない。世間にも、嫌いな有名人に対してショボい嫌がらせを毎日書き込んでいるようなサイトがまま、あるけど、ああいうのって自分の身を客観視するもう一人の自分(『さよなら!絶望先生』で言うところの“ゲッペルドンガー”)がいたら、ずいぶん自分自身が情けなくなってくるんじゃないかね。

村崎 よく分からないけど、それも一つの愛情なんだろうね。オレはホントに嫌いなモノは、関わるだけ人生の無駄なので完全無視しちゃうよ。それについて真面目に考えるだけ時間の無駄っていうか、嫌いなモノのために貴重な生存時間を使うのはもったいないからね。たぶんオレが嫌いなモノやヒトは誰か他にもそれを激しく嫌う奴がいるだろうから、批判や攻撃はそいつらを信頼して丸投げするわ。誰でもいいからオレの代わりに憎んだり恨んだりしてくれや(笑)。オレはそんなふうに憎悪ですら他人任せにして、自分は好きなことに専念しちゃうズルくて功利的で冷たい人間なのよ。だからストレスが溜まらなくてヌクヌクと怠惰なデブのままなんだろうな〜。

唐沢 似たようなグループ犯罪だと、相変わらず振り込め詐欺関連のニュースが続いているね。

村崎 いい加減ブームは過ぎたかと思ったら、ますます複雑化した手口が流行ってるんだってさ。去年後半あたりから振り込め詐欺の対策で、警察と被害者が協力して“騙されたフリ作戦”というのを始めていて、被害者が犯人に騙されたフリをして金を払う約束をして、犯人グループが指定してきた現金の受け渡し場所に警官を張り込ませて、犯人が受け取りに来たところを逮捕する作戦なんだけど、今度はそれに対する“騙されたフリ作戦に協力してください詐欺”というのが出てきたんだよ(★3)

唐沢 もう何がなんだか(笑)。

村崎 どういう手口かというと、まずいかにも振り込め詐欺っぽい内容の電話がかかってきて、振込み先を指定して一回切れると。するとその数分後に、県警の警察を名乗る人物から「私、振り込め詐欺担当の警察官なんですが、いまこれこれこういう人物から不審な電話がありませんでしたか」という電話が入る。それで、さっきそんな電話がありましたと答えると、「囮捜査を実行しているので、騙されたフリをして、試しに言われた通りに振り込んでみてください。お金は後で返金しますから、ご安心ください」みたいなことを言うんだって。

唐沢 それで実際に振り込んだあと、黙って全額引き落としてトンズラか。うまく考えるもんだ。

村崎 こないだ発覚したケースでは、被害者の人がさすがに不審に思って、自分から110番に電話して警察に訊いてみたら、「本署ではそんな捜査はやっていません」という返答だったので、そのまま通報して、犯人側が受け取りに現れたところをお縄にしたんだと。

唐沢 犯人側も疑心暗鬼にならざるを得ないわな、果たしてこのカモは素直にだまされてくれているいいカモなのか、だまされたふりをして逆にこちらをひっかけようとしている、悪質なカモか(笑)。

村崎 とにかくこういう場合、パニくって言われた通りにしか行動できなくなるのが、いちばんヤバいよな。最近、これまた多い手口が、県警を名乗って電話をかけてきて「おたくの口座から数十万円の金が引き下ろされています。何者かの悪質な犯行かと思われます」って言ってきてね、「これから一時的に口座を凍結する必要があります。県警の者をお宅に向かわせますので、このまま電話を切らずに待機して、数分後にやってくる者にキャッシュカードを渡してください」と言うんだと。するとその通り数分後に玄関のチャイムが鳴ってスーツ姿の男が訪ねてくる。言われるままにキャッシュカードを渡すと「ところで暗証番号は何番ですか」と尋ねてくるんだとさ。

唐沢 そこまで赤の他人に自分の大切な情報を教えてしまうことに対して、少しは警戒心ってもんを持たないのかね、被害者側も。

村崎 いや、警戒心を持たせる隙を与えないようにしてるのよ、犯人側も。さらに念の入ったことに、キャッシュカード渡したあと「ちょっと待てよ」と被害者が疑問に思う頃合いを見計らって、今度は銀行員を名乗る人間から電話がかかってきて「このたびは当方の不注意で大変申し訳ありませんでした。さっそく警察に通報しておいたんですが、もう行っています? で、キャッシュカード渡した? ああ、よかった。あの、誠に恐縮なのですが、この不況のご時世で当方の信用を落とすのは心もとないので、今回の件はなにとぞ御内密に……」と、いかにも誠意あふれる銀行マンの口調で謝罪の言葉を述べるんだってよ。この手口で二百万円以上を騙し取られた婆さんの例がワイドショーで紹介されてたよ。

唐沢 脚本・演出・出演者、最強のチームだね、こりゃ。オレがプロデュースしている劇団にスカウトしたいくらいだ(笑)。

村崎 この種の警察を名乗る詐欺電話への対策は、あわてずに冷静に“確認”するのが一番なんだってさ。警察と称する人間から電話がかかってきたら、所属部署と名前と電話番号を訊いて、それをメモったら、受話器を落としたフリでも何でもいいから一回電話を切っちまうんだよ。それから教えられた電話番号じゃなくて110番の方に電話して「いま県警の○○さんからウチに電話が来たんですが、本当にそんな名前の警察官がいて詐欺の捜査をしているんですか? いるならいますぐ繋いで下さい」って確認すればいいんだよ。そのくらいやらないとダメだぞ。

唐沢 実際、振り込め詐欺にはみんな敏感になっているからさ。最近、銀行ATMの前で「えーと」と数秒間立ち止まっていると、すぐ係の人がやってきて、「大丈夫ですか? 振り込め詐欺じゃないですか?」って訊いてくるもんね。

村崎 で、またここにきて、定額給付金制度っていう、振り込め詐欺グループにしてみりゃ、鴨がネギしょってきたみたいな状況が舞い込んできただろ。テレビでも「給付金詐欺にはお気をつけください」って何度も訴えているんだけど、早くもだまされた爺さん婆さんがバンバン出ているんだとよ。「いまから言う口座に手数料を払えばすぐに給付金を振り込みます」なんて詐欺電話に騙されちまうらしいんだけど、給付金って向こうから払われる金のはずなのに、何で先にこっちから払わなきゃいけないんだって疑問に思わないか、普通?

唐沢 「まず手数料を振り込んでください」とか称して払い込ませるんだろうけどね、もう、こうなると振りこめ詐欺ってのはゲームだね。いかに人をダマせるかの。みんな、犯人側も『スティング』みたいに頭を使うことに必死で、あまり罪の意識がねえんじゃねえか。

★1 カーネル・サンダース像発見

 1985年10月に阪神タイガースがセ・リーグで優勝した際、大阪・道頓堀に集まったファンに道頓堀川(幅約25メートル)に投げ込まれ、行方不明となっていたケンタッキーフライドチキンの「カーネル・サンダース」像とみられる人形が3月10日午後4時ごろ、大阪市中央区の同川で見つかった。
 市の遊歩道整備で川中に爆発物がないか調査していたダイバーが、南側の護岸から約5メートル、水深2メートルの川底でヘドロに埋まっている上半身を見つけ引き揚げた。日本ケンタッキー・フライド・チキン広報室によると、外形や発見地点、ほかに行方不明の像がないことから、投げ込まれたものに間違いないという。
 大阪市は同社に返還する予定。下半身は11日の作業で捜すとしている。
 阪神が21年ぶりにリーグ優勝した85年10月16日、大阪の街は沸いた。その年、三冠王に輝いたランディ・バース選手がサンダース像に似ていたことから、今回の発見場所から約250メートル東の道頓堀店(閉店)の店頭に置いてあった強化プラスチック製の像をファンが胴上げ。「六甲おろし」の大合唱と共に道頓堀川に投げ込んだ。以降、阪神は長期間の低迷が続き、ファンの間では「カーネル・サンダースの呪い」とも言われた。03年と05年にリーグ優勝したが、23年間、日本一にはなっていない。
(朝日新聞3月10日の記事より引用)

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★2 中学生が「先生を流産させる会」

 愛知県半田市の市立中学校で、担任に不満を抱いた1年生の男子生徒十数人が「先生を流産させる会」と称し、妊娠中の30代の女性教諭に対し、いすのねじを緩めたり、給食に異物を混入したりしていたことが分かった。
 同市学校教育課によると、生徒らは今年1月から2月にかけて、教諭の車にチョークの粉やのりなどを混ぜ合わせてふりまいたり、いすの背もたれのねじを緩めたりしたほか、消臭や殺菌、食品添加物などに使われるミョウバンを理科の実験の際に教室に持ち帰り、教諭の給食に混ぜたという。
 見かねた周囲の生徒が2月下旬、別の教諭に伝えて問題が発覚した。担任がけがをしたり、体調を崩したりすることはこれまでなかったという。
 学校側が事情を聴いたところ、席替えの方法や部活動で注意されたことへの不満を口にする生徒がおり、「先生に反抗しよう」という話が持ち上がったのがきっかけだったことが分かった。学校はその後、保護者を呼んだうえで生徒を指導し、生徒らも反省の態度を示しているという。
 校長は「個々にはいい子たちで、最初は信じられず、仰々しいネーミングにも驚いた。ただ軽いのりからエスカレートしたようで、計画的とまでは言えない。命の重さについて、より指導を徹底していきたい」と話している
(朝日新聞3月28日の記事より引用)

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★3 “だまされたふり作戦”詐欺

 埼玉県警振り込め詐欺総合対策本部などは3月25日、振り込め詐欺グループのメンバーで、東京都中野区江古田4、無職、山下敏彦容疑者(43)を詐欺未遂容疑で逮捕したと発表した。警察が振り込め詐欺対策で始めた「だまされたふり作戦」を逆手にとろうとしたという。
 逮捕容疑は23日、別の男らと共謀し、行田市の無職女性(72)方に、会社員の次男(45)を装って「先輩の連帯保証人になり困っている。400万円用意して」と電話。約10分後、警視庁の警察官を名乗る男が電話してきて、「お宅に詐欺の電話があったと思う。逮捕に協力してほしい。金をおろし、100万円を渡して」と持ち掛け、金をだましとろうとしたとしている。「現金の受け取りを頼まれた」と容疑を認めているという。
 県警によると、女性は行田署に通報。署の指示でだまされたふりを続け、指定された行田市役所に出向いた。山下容疑者が「誰か待ってるんですか」と声をかけてきたため、捜査員が取り押さえた。
(毎日新聞3月25被の記事より引用)

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