気合い入り過ぎの鳥取プレデター女

村崎 短期間にいろいろあったね。何だかこの一ヶ月で、いままで溜まっていた猟奇系ニュースが一気に吹き出して大噴火したような感じなんだけど。

唐沢 政治、経済、芸能ニュースにずっと押されっぱなしの一年だと思っていたら、ようやくこの連載にふさわしい世相になってきた感じだね(笑)。

村崎 島根の女子大生バラバラ事件なんか、いったい何の罰ゲームなんだか、数日間おきに頭が見つかっただの、胴体が見つかっただの、肉を削いだ大腿骨が見つかっただの、全国の家庭の夕食時を狙いすましたかのように夕方のテレビからグロいニュースが流れてくるもんだから、オレも食卓のお肉を食うのが楽しくてしようがなかったぜ(笑)。

唐沢 そのわりに、あんまりネットニュースのコメント欄なんかでは盛り上がってないね。やっぱり、市橋達也が捕まったときほどの熱気には及ばない。今の大衆って、もう事件そのものには興奮しなくなっているんじゃないか。むしろ、そういう事件をしでかして一般庶民の感情をスクラッチした犯人像、に興味の焦点が移っているんじゃないかという気がする。のりピーと押尾の二人の事件だって、押尾の方がはるかに重大な事件なんだけど、のりピーの報道の方がずっと大きかったのは、事件の中心人物のスター性なんだな。

村崎 おまけにとうとう森繁先生や円楽師匠が大往生を遂げて、もうワケわかんねえくらいいろいろあった一ヶ月だったな。とりあえず先月の続きから行くと、あれだけ木嶋佳苗の話題で盛り上がったわずか数日後に、今度は似たような詐欺で六人の男を冥界送りにした、三十五歳&七十キロの“鳥取のプレデター(by 週刊新潮)”女が捕まってるんだよ。(★1)

唐沢 こうなってくると、全国の女詐欺師が殺人コンクールやってるみたいな印象だねえ。いや、マジに数年後、こういう、星に導かれてワラワラわいて出た犯罪者たちが八犬伝みたいに集って凄い事しでかすんじゃねえか(笑)?

村崎 この女、鳥取県警はもう五年前ぐらいから怪しいと目をつけていたらしいんだけど、気づいたあとも二、三人ばかり死んでいるんだよ。

唐沢  お鍋見ていて、と言われた子供が吹きこぼれて焦げ付くのを、言いつけ通りじーっと見てました、って話を思い出したわ。なんだ、そりゃ?

村崎 事件が大きくなるまで大切に育てるつもりだったのかな? オレの聞いた情報によると、鳥取って、若い女性がAV借りる率が日本でいちばん高い県だっていうんだよ。砂丘以外に何もないような土地だから、女もエロい娯楽に餓えてるのかねえ?

唐沢 砂丘以外何もない、と言うが最近は砂丘も緑化が進んで消滅しかかっているんで、あわてて砂丘を保護しているんだよ。そのうち、“砂丘もない”県になる。空虚というか、心のよりどころがないっていうか。

村崎 そういう土地柄だからこそ、ここまで気合い入った犯罪者が出てくるんだと思うんだな。正直、佳苗のほうはまだ表向きはセレブ気取りができる品格が残っていたけど、このプレデター女のほうは、まさに全身まるごと欲望むき出しの猛禽類っていう感じ。犠牲者の中に海で不審死を遂げた二十代の男性がいるんだけど、その人は生きてる間もこの女に首輪で家の柱に繋がれて、会社の給料とか全部ブン取られて、マジでシャレにならないくらいの奴隷状態だったらしい。

唐沢 うーん、日本人離れしているな。日本人の行動って、政治や文化は言うに及ばず犯罪の分野でも妙にチマチマして、平均というか常識の範疇に収まってしまっているところがあるんだけど、やっと日本でもそういう、ヨーロッパの猟奇犯罪者に匹敵するようなすごみを持った奴が生まれた、と、感涙に堪えん(笑)。

村崎 他に読売新聞の記者とか警察官も死んでるんだよね。警察もマスコミも血祭りに上げられるんだから、もう怖いもんなんかねえぞ。男が寄ってきたら直ちに蟻地獄に引きずり込むような、すさまじい性格みたい。

唐沢 でも、佳苗もそうだけど、この女も三十五歳で七十キロの巨漢女だったんでしょ。ここらへんがついに現実にフィクションがかなわぬ、というか、人の想像力がかなわぬところだな。そんな大山デブ子(デブ女優。戦前の大都映画などで活躍)みたいな女優に言い寄られて、嬉しいのか?

村崎 いや、勤めていたスナックでは、客の男に触られると「きゃ〜! いや〜ん♪」とか言って身をよじって恥じらって、それがなんかすごく可愛いかったらしいんだわ(笑)。

唐沢 鳥取にはデブフェチが多いってことか(笑)。実際、抱いてみると、痩せてギスギスした女より、太った女のほうが絶対気持ちがいいっていうもんね。大山デブ子もモテたっていうからなあ。

村崎 やたらと女の顔の美醜にこだわるのは童貞的な思考で、実際のセックスだと互いに身体を密着させてハメ合ってる間は相手の顔なんかほとんど見ねえもんな。そうなると、肌が触れ合う感触が心地いいポッチャリ系のほうがガリガリの痩せ型よりも抱き心地がイイし気持ちも良いんだよ。だから女の顔ばかりにこだわるのは馬鹿げてる。

唐沢 七十キロの女なんて、もはやポッチャリを超えているような気がするんだが(笑)。まあ、触感美人というのは新しいジャンルかもしれんがなあ。

村崎 それで捕まるときに付き合っていた男からも、ほぼ財産全額奪い取っていたっていうし、いやもう、佳苗もすごかったけど、このプレデター女も全然負けてねえよな。

唐沢 ここまでくると、逆に頼もしく見えてくるよね、女性解放運動はついにここまで強い女を生んだ、と。平塚らいてうもご照覧(笑)。

村崎 オレはともかく、この女二人については「お前らは、いつ人間をヤメたんだァ!?」ってマジで訊いてみてえよ(笑)。

唐沢 変な話、男ってどんな犯罪者であっても、社会規範ってものを心の中に持っていて、犯罪者である自分に劣等感をどこかで抱いている場合が多いんだな。社会>自分、という構造認識を持っているっつうか。ところが、女性の場合はとにかく自分が中心で、規範が自分の意志と相反した場合は、「規範の方が間違ってるのよ」になる。知り合いの女性で一年間で十五キロ体重が増えちゃった人がいるんだけど、そのとき、「私は“女”としてのすべてを捨てることにした」って(笑)。着飾って女の子らしさを出すなんてことは一切やめて、ひたすら食べたいものだけ食べていくエピキュリアン的な人生を送ることにしようと決意した、ってのがいる。男性はなかなか、こうは開き直れない。女性は一度状況が悪化したら、それを何とかしようと思うんじゃなくて、その状況を正当化するように自分をシフトチェンジしちゃうんだな。

村崎 その意見に賛同すると、太った女全員を敵にまわすことになるのでやめとく(笑)。でも、佳苗の場合なんかはそれ以前の問題で、これも捕まったときに狙われていた男の人、付き合って一週間で一発もやらせてもらえなかったのに四百五十万も騙し取られて、なおかつ拘置所の佳苗から「信じて待っててね。あなたは私の希望だから」とか手紙が届くんだと。それで最後に殺されたあの可哀想なモデラーの人のことを「あの人は土地もたくさん持っていて、私に店を出させてあげるとかウソばかりついて私を騙したヒドイ人だから振ってやったら腹いせに自殺して、おかげで警察に疑われてさんざんの目にあった」とか、殺した相手をクソミソに言ってるっていうんだからあきれたよ。ほんとに体型通り“ふてえアマ”だわ(怒)。

唐沢 昔、誰だったか官能系の作家が言っていたことだけど、「女というのは生理の度に新たに生まれ変わる生き物である。だから男みたいに過去に執着せず、一ヶ月単位で過去をあっさり忘れることができる」って。まあ僻論とはいえ、こういうひとつ罪を犯すたびにリセットできるような犯罪は、確かに男にはできないことかもしれない。

村崎 あとさ、気づいたんだけど、この二人の女の過去に共通している要素として、二人とも中学生ぐらいの人生の早い時期にテレクラにハマってるんだよ。佳苗のほうは友人の証言もあって、中学生の頃からテレクラ援交でボロ儲けして金遣いが荒かったらしい。男ってある部分でどうしようもないバカだから、どんなブスが来てもそれが制服着た中高生ならそれだけで喜んじゃうんだよ(泣)。

唐沢 二人とも年齢からいって、若い盛りを過ごしたのが、九十年代前半のテレクラブームの頃だよね。あの時代って、全国の十代の女子が「自分の性が売り物になる」ってことに目覚めちゃったときなんだな。

村崎 それでかなり豪遊して、中標津までタクシーで一時間ぐらいかかる場所までバンバン札びら切って往復して、病院の駐車場の裏で金持ちっぽい男と会っていたとかいう目撃談もある。はっきりいって、女子中高生なんてまだ若いだけでセックスのテクもそんなに期待できない未熟者だろ? そんな連中に法外に高い金を払ってボロ儲けの喜びを教えたりしたらダメに決まってんじゃん。そんなのは結果的に女の子のタメにならないっていうか根性を腐らせるだけなんだよ! 地道なバイトもやったことのない十四、五歳の女の子が短時間に股開くだけで十万円とか貰っちゃってそれが日常化したら、もうコツコツ真面目に働く気なんて失せるって。

唐沢 昔の若い女の子っていうのは、自分の身体が商売になるのは二十歳も半ばを過ぎて、肉体も精神も成熟してから、と思っていたんだけど、今は価値観が逆転しちゃって、「女の子は若ければ若いほどいい」っていうことになっちゃったでしょ。それはロリコンという趣味にスポットライトを当ててしまった、われわれの世代の責任でもあるよね。

村崎 援交でも、女子高生より女子中学生のほうが高く売れるっていうし、とにかく素人で若いってのが最上の価値になっちゃってるんだな。ロリコンではない熟女好きのオレにはどうにも理解不能の世界だよ。

唐沢 そうなると、女の子側も自分の人生のピークっていうのを、自分を高く売れる十代の頃に置いちゃって、そこから先の人生っていうのはただ目減りしていくだけって思い込むようになっちゃう。そうなるとこの先、どうでもよくなって、年食って刹那的に男をくわえ込んで金を奪って殺すような行為に、何の罪悪感も持たなくなる。人生をかなーり早い段階で、平気で捨てられるようになる。

村崎 ただ当時、テレクラ遊びを楽しんでいた若い女の子たちは皆けっこう割り切っていて「これはいまだけの遊び」「こんなことできるのは学生の間だけ」ってことで、学校を卒業したら就職したり進学したり結婚したりで一般社会に戻っていったのが大半なんだよ。女の子たちは、いつの時代も妙に現実的で、同年代の男たちよりはるかにオトナな生き物だから。

唐沢 うん、さっき言ったように一ヶ月単位で切り替えられるのが女だからね。頭のいい子は「はい、自分の黄金時代、ここでおしまい」って切り替えられるんだ。だけど、一度甘い味を覚えて帰れなくなるのもたくさんいるわけで、その典型がこの詐欺女二人というわけじゃないかな。

村崎 だから、考えてみるに、この事件で本当にいちばん悪いのは、あの頃、女子中学生だからというだけで正当な評価もせずに有り難がって、法外に高い金を払って、彼女たちをカン違いさせて道を踏み誤らせてしまったバカな大人の男どもなんだよ! 今回の女詐欺連続殺害って、その頃の因果応報なだけかもしれんぞ!

唐沢 こう言っちゃなんだけど、結局、戦後の男が女性の価値観を性的な側面からしか認めてなかったことのツケだよね、これ。昔は遊びひとつとっても、最終的にセックスがあるにしろ、それはそれとして男女の会話を楽しむみたいな吉原遊郭みたいなサロン的文化があったんだけど、ここ十〜二十年くらい「とにかく金払ってやれればいい」みたいな風潮があまりに蔓延しすぎたでしょ。そうなると女の側も男を金でしか見れなくなるのは当然のことで。

★1 鳥取連続不審死事件

 鳥取県内で今年4月から10月にかけて、男性3人が海や川などで相次いで 不審死していたことがわかった。
 3人の遺体からは睡眠導入剤が検出された。いずれも県警に詐欺容疑で逮捕された鳥取市内の元スナックホステスの女(35)とかかわりがあり、県警は死亡の経緯に不自然な点があることから、何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査している。女の周辺ではほかにも数人の死亡が確認されており、県警はこれらについても関連を調べている。
 捜査関係者によると、同県北栄町のオートキャンプ場沖の日本海で4月11日、県内のトラック運転手の男性(当時47歳)が海底に沈んでいるのをワカメ漁の男性が発見。着衣はなく、目立った外傷もなかった。男性は女の知り合いだったといい、同月4日から行方が分からなくなり、親族が捜索願を出していた。
 また、鳥取市覚寺の摩尼(まに)川では10月7日、同市内の電気工事業の男性(当時57歳)の遺体が見つかった。男性は女と顔見知りで、女と同居している男(46)(別の詐欺容疑で逮捕)が購入した家電製品の代金約100万円を回収するため、前日の6日朝に自宅を出たが、帰宅しないため、家族が捜索願を出していた。
 男性の顔には複数の殴られたような跡があったほか、水深が約20センチしかない川で顔を水につけて亡くなるなど、県警は殺害された可能性もあるとみて捜査していた。
 さらに、女が住んでいた鳥取市内のアパートの別の部屋に住む無職男性(58)が10月27日朝、自室で死亡していた。
(読売新聞11月5日の記事より引用)

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