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村崎 興味深かったのが、発売前の「少年ジャンプ」の中身をスキャンしてYouTubeにアップしていた奴が捕まっているんだけど(★9)、驚いたことに犯人は名古屋の中学生だっていうんだよな。実際、こういう違法アップロードってすごくてさ、「ジャンプ」は毎週月曜日発売なんだけど、もうその前の週の木曜日くらいにはスキャンした画像がネットに上がっているんだよ、しかも英語とかスペイン語に翻訳されて(笑)。 唐沢 恐ろしい世界だね、しかし(笑)。昔はせいぜい、前の週の土曜日に早売りされている程度だったんだけど。いま、そんなに早く一般人に手に入るのか? 村崎 取次ぎに見本出しするのが前の週の半ばくらいだろうから、見本が出来るのは火曜日くらいで、おそらくそのへんから流出しているんだろうけど、そんなことが可能なのは印刷所や製本所や取次(問屋)や出版社レベルだよね。実際、昔、パチンコ雑誌全盛期に印刷所のパチンコ中毒者が攻略法を書かれたページをこっそり破いてそのままパチンコ屋に突進していたという伝説もあるんだけど(笑)、そういう微笑ましいのとはまた違うよね、これ。 唐沢 しかも、なんで名古屋の中学生がこんなもん持ってるの? 村崎 たぶん違法のファイル共有ソフトで入手したものを、何の気なくアップしちゃったってことなんだと最初は思ったんだけど、現物を一ページずつデジカメで撮ってデータ化していたってことだから、発売前の現物がこの中学生の手元にあったってことだよな。 唐沢 だから出所がどこで、それがどういう過程でネットに流れて、名古屋の中学生の手に渡っちゃったのか、そこをまずしっかり調べることだよね。単に「著作権侵害にあたる行為はよくない」というだけじゃ、抜本的な解決にはならないから。ネット人種特有の、同じネット人種仲間で“スゲエ、ネ申”とか言ってもてはやされたい、というだけの動機なんだろう? 村崎 出版社としても困るのはわかるよ、「被害資産は約14億円」とか言ってるのはさすがにウソだと思うけどさ(笑)。そもそもネットで読む奴ってのは、現物が早売りされていても絶対金出して買わないと思うんだ。 唐沢 ネットユーザーはとにかく、金出さないからね。CDもDVDも、何でもタダで手に入るものしか見たり聴いたりしなくなる。 村崎 これじゃますますマンガが売れなくなるよなあ。この中学生もアフィリエイトで儲けたのか知らんがけっこういい機材そろえていてさ、たぶん金儲けっていうよりは、単にみんなに賞賛の言葉をかけてもらうのが嬉しかったってだけなんだろね。あと、忍者の武器「クナイ」を大量に所持していたメーカーの男も逮捕されているんだけどさ(★10)、今時、どうするんだよ、クナイなんかたくさん持ってて(笑)。 唐沢 確かに以前、伊賀上野に取材に行ったとき、あちこちの店に「手裏剣あります」とか張り紙がしてあって、キオスクまでに張ってあったのは唖然としたけど(笑)、その程度のニーズはまだあるね。 村崎 つーか、凶器として投げて刺す以外に使い道なんかないじゃん。 唐沢 いや、忍者の道具としては万能刀で、壁をガリガリほじって穴を開けて、そのなかに爆弾仕掛けたりとかはできるんだよ。ただ、そんな白土三平のマンガみたいなことをホントにする奴がいるのかというと別問題なんだが。 村崎 つーか、それだけのスキルもってる現代忍者なら、最初からクナイ自作してるって(笑)。あと、大きいニュースだと、やっぱり広島のマツダの工場で元期間従業員が車を暴走させて、一人死亡10人重軽傷の無差別テロやった事件か(★11)。 唐沢 落語家の立川談笑が「暴走する車はトヨタだけじゃなかったんですね」とか高座で言ってたけど(笑)。 村崎 本人は「オレはアキバ事件を超えた」とか言ってるらしいけど、全然超えてねえよな。そもそも会社に不満があるのなら、何で元仲間みたいな従業員を狙うのかね。経営者とか重役を狙うならまだ話はわかるけど。死んだ一名ってのがまた、3人目の子供が生まれたばかりの真面目で誠実な評判の良い従業員だったらしくて、相変わらず殺される必要のない人から狙われるんだな。おまけに一人死んだくらいじゃ死刑にならないし、こいつはこいつで自決する覚悟もないんだろうし、なんかショボすぎてコメントする気にもなれん。 唐沢 この連載の本来の性質からすれば大きく扱うべき事件なのかもしれないけど、あまりにもショボすぎて、扱う気にすらならないね、これ。 村崎 よって、これで終了(笑)。もっとどうしようもないニュースだと、AKB48の政権交代ってのもあったけど(★12)、オレ、一位になった子と二位に落ちた子の顔の写真、何度見ても全く区別がつかなくてさ(笑)。 唐沢 こういうこというとオジサンになった証明みたいだから言いたくないけどさ、ホント、誰が誰だかわからないよね。 村崎 オレは間違いなくキモくて汚いオジサンだからはっきり言うけど(笑)、誰が誰だか全然区別つかねえし、誰がセンターになったところでオレの人生には何にも関係ねえんだよ! 唐沢 ていうか、こういうのに一緒になって騒いでる連中見てると、京極夏彦の小説じゃないけど「死ねばいいのに」って思うよね(笑)。 村崎 で、これとセットになっているようなニュースが、首都大学東京の学生が、アートだといって通行人の女の子から「ドブスを守る会」画像を無理やり収録していたことで退学になったっていう事件なんだよ(★13)。 唐沢 主犯の学生のゼミを担当していた准教授も解雇されてるよね。ツイッターでこいつらを煽るようなことを書いていた准教授も訓告されたって。 村崎 たしかに美術界ではもう何十年も前から、社会の変化とともに「アートとアートではないものの境界線はどこか」って論議があるにはあって、ちょっと前にも広島の空に「ピカッ」という文字を描いたアート集団が問題になっていたこともあったよな。このオレだって「猟奇事件をアート扱いして勝手に面白がろう」とか思ってこういうふざけた連載をしているわけなんだが(笑)、殺害行為そのものが芸術的表現として法的に許されるなんて思ってないし、「アートだから何やってもいい」なんてことは間違ってもいえねえな。 唐沢 それをアートを考えるのは当人の勝手だけどさ、それを受け取る側がどう見るのか、そこまで考えて表現しないとアートとは言えないよね。 村崎 オレも過去の仕事の取材でいろんなアーティストと会って話してきたのでアートの文脈や境界線についてはそれなりに理解のあるつもりなんだが、はっきり言うけど、こいつらの今回のドブスいじめのアートはシャレになんないし、何よりスポンサーがつきません(笑)。これ、いちばんわかりやすい尺度だよ。アートなのかアートじゃないのかってのは、卑俗的だけど案外、スポンサーがつくつかないの問題なのかもしれないよ。単なる悪質な弱者いじめを支援してカネを出す公的企業はこの地上に皆無だって話。 唐沢 ただ、アートにはもともと「社会の通念に反抗する」的なカウンターカルチャーの要素が多分に含まれているわけだよね。60年代アングラ文化からずっと。つかこうへいにだって『あえてブス殺しの汚名をきて』なんてエッセイがあるし。 村崎 だけど、この場合はそういうのと全然違うわ。たとえば一般市民を巻き込んで行われた寺山修司の市街劇だって、当時批判はあったけど、無関係の個人をさらし者にして攻撃するような真似はしなかった。本人たちは日本人の美的感性に揺さぶりをかけるつもりでやっていたのかもしれないけど、結果的にネタにした実在の女の子たちを無駄に傷つけただけじゃん。要するに、ただの弱いものいじめのテロ行為。 唐沢 弱いものいじめがネット周辺で是とされる風潮ってあるからね。アートというよりは、こういうヤバイ風潮が敷衍されただけの事件のような気がする。 村崎 YouTubeにも弁明動画みたいなものがアップされていたそうだけど、さすがにこの件については「表現の自由の侵害だ!」なんて、日本ペンクラブも主張しないんだろうな。 唐沢 ただね、「表現の自由」という旗を掲げるならば、こいつらのやったことだって表現行為だと主張されている以上、擁護されなきゃいけないのよ。こういうのは道徳的に正しいかどうかという問題じゃなくて、表現として認められるか否かの問題だから。気をつけなきゃいけないのはさ、いまの非実在青少年条例について「表現の自由」という見地から反対している人たちも「じゃあ、あなた方は未成年の性表現を認めるというのであれば、あらゆる人種差別や弱者差別的表現も認めるのか」というサカネジを食らうことも覚悟しなきゃいけない。「表現の自由」という名の旗を振り回すだけなら誰だってできる、要するに「被害者の顔が見えるか」どうかって話なんだよ。 村崎 オレも「ドブスを守る会」の画像の現物見たけどさ、さすがにこれはシャレになんないと感じたわ。正義とか無関係に、オレがこの画像撮られた女の子たちの親とか兄弟だったら、面白がる前に迷わずこいつらブン殴るだろうな。「テロが芸術なら復讐も芸術だ」なんていう理屈なんか一切関係なく、単純で反射的な暴力行為のみで(笑)。 唐沢 何度も言うけどさ、「オレは正しい」なんてことは虫けらにだって言えることなのよ。でも、「こんなことをしたら誰かが傷つくんじゃないか」っていう想像力を思い巡らせることは社会性を持った人間にしかできないことでしょ。 村崎 ブスを笑い者にすることだって、お笑い番組の企画の中なら普通に行われてるんだよ。でもそれは出演者がお笑い芸人で、本人が笑われるのを前提で参加してる番組なんだから視聴者も安心して見ていられるわけで、それを無関係の一般人に対して、個人の意志や尊厳を無視して暴力的にやるのは誰がどう考えても完全アウトだろ。あのレベルで芸術というなら、そのへんのテロや無差別殺人や独裁や大量虐殺もみーんな芸術性を評価しないといかんだろうし、そういうのを芸術として楽しめのは明らかにオレみたいに性格と根性のひんまがった少数派だけだろう。どちらかというと今回の事件は60年代アングラ芸術の影響というより、90年代の「電波少年」の影響の方が大なんじゃないかという気がするな。 唐沢 アングラのときの世間敵に回すパフォーマンスは言わば反権力だったけど、80年代のそれはテレビという権力をカサに着て弱いものいじめを嬉々としてやっていたな。ネットでのいじめにも同じことが言える。“こんなに大勢が喜んでいるシャレにのらないヤツは悪だ”というような、数の暴力、それもネットの、裏にどれだけの“大勢”がいるのか、全く見えない上での暴力ね。 村崎 まあ、実際問題として、こんな企画やってるようではアーティストとして企業のスポンサーは絶対つかねえよなあ。だいたい、企業やスポンサーから大金引き出せるようなアーティストはもっと狡猾に作品のテーマをでっちあげるよな、「未来の子供のために」とか「地球環境のために」とか「世界平和のために」なんていう善良なテーマ。 唐沢 それはそれでまた、小賢しいんだけどね(笑)。 |